【Momo by Michael Ende】1.『モモ』のお話の語り手とは

※本記事内の引用文はすべてPuffinBooks社の英語版Momoから引用して掲載しております。
※本記事はモモのストーリーのまとめや要約を目的としたものではありません。ご興味のある方はご自分で、英語または日本語の本を読むことをお勧めします。

1.The Amphitheatrre

モモの物語は以下の文から始まります。

Long, long ago, when people spoke languages quite different from our own,

これは、ある意味とても印象的な書き出しです。
Long, long ago
これ自体は定型文で、日本語だと「昔々」ですよね。
ただしこの物語の重要人物にGuido Guide(大島かおりさんは「観光ガイドのジジ」と翻訳されていました)というストーリーテラーが登場することと重ね合わせると、これはなかなかに胡散臭く、楽し気な語り出しに聞こえてきます。
これから始まるモモの物語は現実の話か、空想の話か、はたまたその両方か?
それは読者のみなさん次第、とエンデが語り掛けているようです。

この定型文に続けてquite different languagesと「言葉」に焦点を当てるも良いですよね。いつの時代のどこの国の読者にも向けた非常に広い視点の語り手であることを窺わせます。

それから章題にもなっている円形劇場についての説明が続きますが、モモはまだ登場しません。

以下の文が出てきます。

Then silence returned to the stone arena and the crickets started on the next verse of their interminable, unchanging song.

忘れ去られた円形劇場に時折来る酔狂なお客たちが去った後、再びコオロギたちが鳴き始めた、というような場面ですが、面白いのはclicketsに定冠詞theが付いていたり、the next verse(次の節)という表現が出てくることです。

この文章の前に、時代が経ち、円形劇場は徐々に忘れ去られていった、というような文があり、そこに以下の文章が出てきます。

Crickets now inhabit their crumbling walls, singing a monotonous song that sounds like the earth breathing in its sleep

直訳するなら、「コオロギたちが今や円形劇場(複数=不特定)の崩れかけた壁に住み着き、地球の寝息のような単調な歌を歌っている」です。

語り手はこの時代の話、円形劇場の話(1回めのコオロギ登場)と続け、その後モモが登場する特定の円形劇場の話に移った後にまたコオロギの話をしているので、先のコオロギたちと、このコオロギたちは別物にも思えるんですが、語り手の中ではコオロギの歌は連続している、という書き方なんですね。

つまりモモのお話自体が、この地球の寝息の幕間に語られる小話に過ぎないのかもしれない。

もう一つ注目したいのが、「崩れかけた壁にコオロギが住み着いている」に使われている動詞”inhabit”はこの物語の書き出しの2文目で「そびえたつ宮殿に王や皇帝が住んでいる(inhabited)」という舞台説明の際にも出てきた単語です。作者の悪戯心が感じられます。

そしてようやくモモ登場。

Her unruly mop of hair looked like as if it had never seen a comb or a pair of scissors.

直訳は「彼女の手に負えない髪のモップは、これまで一度も櫛やハサミを見たことがないかのようだった」

うーん、主人公登場のインパクトを与える児童文学っぽい楽しげな表現ですね!

今回はここまで!

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